あなたは会社を辞め、明日から自分の力で稼いで行こうと決心しました。しかし、そのときふと考えます。
「個人事業主と会社設立ではどっちのほうがいいんだろう?」
個人事業主と会社設立の違いに関して説明していきます。
起業か独立の違い
起業と独立は同じように使われる言葉ですが、私個人は明確に違うものと考えています。
独立はそれまで会社などで仕事としてやっていたことを、取引先などを引き連れてそのまま個人で引き受けるようにすること、と考えています。あくまでこれまでの延長上で仕事をしていきます。
デザイナーやプランナー、クリエイター、イラストレーター、プログラマー、Webデザイナー、フォトグラファー、ライターなど特化したスキルを持っていることが前提にあります。
起業は逆にこれまでやったことのないようなことややり方で、新しく商売を始めることと定義しています。
また、人を雇って、人を働かせることによって稼いでいく場合は起業といえるでしょう。
なにか機械などを購入してその機械を使ってモノを生産したり、あるいは店舗を構えて運営していくようなときもこちらのタイプになります。
あまり語られない会社設立のデメリット
会社設立=会社の社長になる=栄誉なこと…と考えられていたのはもう数十年前の話で、いまや会社設立するだけでは誰も褒めてはくれません。
もちろん褒められるために会社設立するわけではありませんが・・・
会社設立のメリットはよく取り上げられる話題ですが、実はあまり具体的なメリットはありません。
むしろ会社設立のデメリットのほうが明確にありますので、そちらのほうを詳しく紹介していきたいと思います。
社会保険「税」を払わなければならない
実は会社経営者の中には、社員の社会保険料や雇用保険料のことを影で「税金」と呼んでいる人たちがいます。
社会保険料(健康保険と厚生年金保険)の支払いは仮に社長一人の会社であっても加入する義務があります。
ある意味、税金の取り立てや取引先との支払いよりも厳しいため、「社会保険税」などと呼ばれるわけです。
また、法人住民税の均等割と呼ばれる税金の支払いもあり、とにかく会社設立後はこうした支払いとの戦いと言えます。
役員報酬の額はコロコロ変えられない
なんとなく「会社役員=金持ち」のイメージがあり、毎月決まった額が振り込まれる給料よりも役員報酬のほうが「会社が儲かったときの分け前」のような気がしたりもします。
しかし実際には役員報酬は原則年に一度しか変更のチャンスはなく、一時ボーナス的な役員報酬のときは事前に知らせておかなければなりません。
個人事業主であれば、生活費が苦しい月は事業の売り上げの中から自由にお金を取り出したりすることも可能ですが、会社設立の場合は経営者といえども別人格ですので勝手にお金を引き出すわけにはいかないのです。
会社のお金を自分の口座に一時的に入れる場合は、金銭貸借表と呼ばれる借金の証書のようなものが必要になってきます。
法人の会計・決算は難しい
個人事業主の場合青色申告というものがあり、いまや会計ソフトやクラウドソフトを使えばあっという間にできてしまいとても簡単です。
しかし会社を設立して法人の会計処理・決算ともなるとさらに専門的な税務の知識が必要であり、事務処理の量も増えていくために、小さい規模での事業を考えている人は無理に会社設立をする必要はないと言えます。
個人事業主のデメリット
今度は個人事業主としてやっていく際のデメリットを挙げていきます。個人事業主は、会社設立よりはるかに気楽なのですが、気楽さゆえに・・・ということがいくつかあります。
法人口座が作れない
個人事業主は当然法人ではないので法人口座が作れません。そして、当然信用も会社設立した場合に比べて薄いので銀行から運転資金を調達することも難しいのです。
何かを仕入れて販売する事業(アパレルや健康食品など)や、機械などで何か生産するような仕事(機械加工・組み立てなど)はの場合はやはり会社設立したほうがよいでしょう。
大儲けすると税金の支払いがキツイ
個人事業主の場合、事業がどんどん大きくなって儲かってくると累進課税方式になっていますので、儲かれば儲かるほど税金をたくさん支払わなければなりません。
その点、会社設立した場合、法人税は一定税率です。
また、会社設立して役員報酬での収入に切り替えれば、役員報酬は一定の条件を満たせば損金算入可能(経費として計算)ですので、所得水準が400万以上になりそうな場合は法人設立を検討した方がよいようです。
法人取引する際に信用がない
会社設立して法人化していない場合、取引先に露骨にイヤな顔をされる場合もあります。何か問題が生じた時、個人事業主が相手では責任を取るのは難しいと考える人も多いのです。
会社設立していても責任能力は個人事業主と本来あまり変わらないはずなのですが、提携先などで事業を引き継いでもらったり、支払いが滞った場合でも金融機関に相談する場合、会社設立しておいたほうが様々な対応がやりやすくなります。
また、法人相手の仕事をする場合はこちらも会社設立して法人化しておいた方がよいようです。
求人募集が難しい
会社設立しなくともハローワークや求人情報誌に求人情報を載せることはできますが、なかなか厳しいのが実情です。
実店舗を運営している場合は張り紙などを出すことで集めることもできますが、やはりそうそう応募者が現れることはないようです。
現在は特にSNSやネット、マスコミなどで待遇の悪い企業を「ブラック企業」としてメチャクチャに叩く傾向にあります。
ましてや会社設立していない事業で働きたいと考える人もまずいないのが実情なので、家族や友人以外で人を雇って働かせるのが精一杯のようです。
会社設立か個人事業主か冷静に判断すべき
いかがだったでしょうか?まとめると、人を雇って人を動かしお金を稼ぐ場合は会社設立、自分一人、あるいは少人数で作業をしてお金を稼ぐ場合は個人事業主、といったかんじでしょうか。
最初は個人事業主ではじめてみて、ある程度軌道にのってきたら会社設立、というやり方で成功している人も多いので、まずは事業を軌道に乗せることから考えて行きましょう。