なぜアニメ業界はブラック化するのか徹底検証してみた【後編】

漫画業界も締め切り前は長時間重労働です。ゆすやんです。

前回はアニメ業界の労働条件についてまとめてみました。

なぜアニメ業界はブラック化するのか徹底検証してみた①

今回は出資側の問題点について検証していきます。

製作委員会方式が悪は本当か?

アニメファンやネット上での意見で、アニメ業界がブラック化する原因の一端としてよく取り上げられるのが「製作委員会方式」です。

製作委員会方式とは複数のスポンサーが作品単位で出資して、そのスポンサー費でアニメ制作会社に制作を発注するという方式です。

よくアニメのオープニング映像に「◯◯(作品名)製作委員会」と名前が入っているのを見かけると思いますが、それが製作委員会方式と呼ばれる方法で制作されたアニメということです。

なぜこの製作委員会方式が叩かれるのでしょうか?

製作委員会方式のメリット

製作委員会方式がネット上などで叩かれる理由を考察する前に、製作委員会方式のメリットとデメリットを見ていきましょう。

まずメリットのほうですが、アニメ作品というのは作って放映すれば必ず大ヒット作になって投下した予算が回収できるわけではない、というのが前提にあります。

当然アニメ作品の人気には当たり外れがあり、それも50%で当たり外れというよりは、1クール30本新作アニメがあったら、だいたい5〜6本が良作で超大ヒットが1本あればいいほうと言われています。。

全体の8割くらいの作品がトントンの収支になるか、もしくはややマイナスくらいとなるのが常なのです。

当たりくじが少ないとなれば経営側・出資側がまず第一に考えるのは「外れた時のダメージを減らしたい」ということです。

アニメは1話作るのに大体最低1,300万円くらいかかると言われています。12話構成になったとすると1億5600万円が必要ということです。

もし1社がまるまる1億5600万円の予算を投下して、ほとんど売れなかった外れの作品を引いた場合、投下した1億5600万円の予算は丸損ということになります。

もちろん出資側は企業広告費として考える部分もありますので、アニメ作品自体の売上で資金回収できなくてもよい、という考え方もなくはないのですが、それにしても1億円を超える損失というのは痛すぎます。

そこで、出資者を複数にして1社2000万円ずつくらい払ってもらう方式にすれば、失敗したときのダメージが少なくてすみます。これが製作委員会方式のメリットになります。

製作委員会方式のデメリット

次に製作委員会方式のデメリットを見ていきます。

製作委員会に名を連ねている会社はテレビ局・広告代理店・ディスク販売会社といったところが多く、そのほかに出版社やおもちゃ会社、レコード会社などが出資しているケースが目立ちます。

こうした出資側の会社はアニメ放映のCMスポンサー費、再放送の版権、DVD・ブルーレイ販売、フィギュアやおもちゃ、関連書籍などで売上を作り、投下した資金を回収しようとします。

当然そのうちの何%かはアニメ制作会社にも権利収入として行き渡るわけですが、現在はそのパーセンテージはかなり低く抑えられています。

よってアニメ制作会社のほうには制作費以外の収入というのはほとんど発生せず、当初予定された予算の中でやりくりするしかなくなります。

つまり作品がヒットしたかどうかは制作会社のほうに責任はいかない反面、ヒットしたときの臨時報酬がほとんど発生しないことになります。

この問題は前回なぜアニメ業界はブラック化するのか徹底検証してみた① で取り上げた労働単価が上がっていかないという問題とも結びついています。

製作委員会方式が悪とされるのは

こうした製作委員会方式がネット上で悪とされるのは特にデメリットのほうの「製作委員会」側が権利を独占しているというところがピックアップされることが増えたためのようです。

つまり、制作会社側が文字通り血の滲むような努力で作り上げた作品を出資者側が権利独占してしまい、実際作っている人たちにお金が回っていかないという構図が見えるわけです。

製作委員会方式は悪とは言えない理由

一般社団法人日本動画協会 アニメ産業レポート2018より抜粋

製作委員会方式が一般的に有名になったのは1995年の「新世紀エヴァンゲリオン」からだと言われています。それ以前にも製作委員会と同じような団体や分担出資する仕組みなどはあったようですが、エヴァンゲリオン以降の作品では製作委員会という名称を用いることが多くなったようです。

そしてこの新世紀エヴァンゲリオン以降アニメ作品の制作本数が増加していってることも見逃せない現象です。

参照:一般社団法人日本動画協会

つまり近年のアニメ市場の拡大と知名度向上に貢献してきたのは製作委員会方式もかなり影響しているのではないか?ということです。

一本当たりの販売リスクを低減しつつある程度の質が保証されたアニメを大量生産することによって、それまで主に子供向けだったアニメが、テレビドラマや映画を見ていた若年層・青年層を取り込み、大人の鑑賞に耐えうるものへと変化していったと思われます。

製作委員会方式の今後

製作委員会方式は製作リスクの低減を図りアニメの裾野を広げた一方で、制作会社の疲弊を産む構図も見えてきました。

今後は自社で一括で製作(ビジネス)から制作(クリエイティブ)まで一元的に行おうとする会社や、あるいはパートナーシップ方式と呼ばれる方法で、スポンサー企業に出資ではなく使用権を制作会社に支払う方式に移行する会社も出ていくことでしょう。

ただしいずれの方法もアニメがヒットしなかったときのリスクは高まるので、どんなにクリエイターからの評判が悪くても製作委員会方式を取る会社は今後もあると思われます。

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