会田誠セクハラ訴訟について考えてみた

今年2月、2018年に京都造形芸術大東京キャンパスで行なった講義で、精神的苦痛を受けたとして受講した女性が大学を運営する学校法人・瓜生山学園に対して慰謝料の支払いを求めるという訴訟を起こしました。

被害を訴え出た女性は

訴訟を起こした女性によると、会田誠が講師をしていた一般向けの講座で、 会田誠が自身の作品である残酷な姿の少女の絵など数点を紹介し、なおかつ講義中にヌードモデルに関する下ネタを口走ったりしていたといいます。

さらには、自慰行為を行う男性やショッキングな画像がスクリーンに映し出され、それを見て気分が悪くなり、その後急性ストレス障害の診断を受けたとし、約330万円の損害賠償を大学側に請求しました。

この女性は京都造形芸術大学の卒業生で、プロの美術モデルとして活動していました。会田誠の講義が「人はなぜヌードを描くのか、見たいのか」という自身の仕事と重なるテーマだったために、興味を持って講座を受講したようです。

会田誠とは?

そもそも会田誠とはどういう人物なのでしょうか?

会田誠は1965年生まれの新潟出身の芸術家です。東京芸術大学の大学院を修了後、芸術家として次々と作品を発表し、特にエロ・グロを強調したセンセーショナルな作風で注目と批判を浴びています。

会田誠に対する世間の評価

会田誠の作品に対しては賛否両論があります。特に欧米の美術に詳しい評論家などからは「会田誠のような作品が欧米の美術館に展示されるケースはない」と厳しい評価を受けています。

会田誠の作品は社会通念や良識、道徳心というものに対する反抗心が込められているものが多く、見方を変えれば女性蔑視や性暴力の肯定、児童ポルノの助長とも捉えられかねないような内容の作品も多く存在します。

一方で既存の芸術の枠にとらわれない活動に対して熱狂的なファンがいることも確かです。会田誠も絵画だけではなく、映像作品やフィギュア製作などジャンルを飛び越えて制作活動を行なっており、従来の芸術家・美術家の枠で 会田誠を捉えることは難しいでしょう。

セクハラ訴訟に対する会田誠の反応

会田誠は自身の講義に対して訴訟を受けたことを聞き、マスコミの取材ではなくTwitterを通して答えております。

会田誠は自身のTwitterで「文化教養講座をイメージしていたならギャップがあったでしょう」と述べました。そして自分自身の創作のモチベーションは「文化教養講座の枠に押し込められることへの抵抗」にあったと告白しています。

環境型セクハラとは?

今回の件で女性側は「環境型セクハラ」という言葉を使って訴えています。この「環境型セクハラ」とはどういうものでしょうか?

セクハラには大きく大別して環境型セクハラと対価型セクハラがあるとされます。

対価型セクハラはたとえば契約、給与の昇降、昇格、転勤、解雇、配置転換などの労働者に利益または不利益となる条件をちらつかせ、性的な嫌がらせを行うことです。

それに対して環境型セクハラは、上司が胸や腰などに接触してきたり、職場で性的なポスターや雑誌などを掲げていたり、メールや文書などで労働者に関する性的な情報を流布したりすることで労働に専念できない環境にすることなどを指します。

今回の会田誠の講義はこの環境型セクハラに当たるのではないか?というのが女性側の主張なわけです。

会田誠セクハラ訴訟に対するネット上での反応

会田誠のセクハラ訴訟に対する主な反応は以下のとおりです。

まず会田誠や大学側に同情的な意見ですが、会田誠の作風を警告した上で講義に参加していたなら自己責任であり、セクハラとは言えず、むしろ訴訟することに対して問題視している様子がうかがえます。

https://twitter.com/W_Fei_hung/status/1101572931254050816
https://twitter.com/W_Fei_hung/status/1101404863877996544

逆に女性側を擁護する意見ですが、結局会田誠がやったのは典型的なセクハラであり、アートではなく単なるわいせつ行為だったという考えもあるようです。

また、そもそも芸術にたいして法律が持ち込まれることに関して違和感を表明する意見もあるようです。

会田誠セクハラ訴訟に対する著名人の反応

千原ジュニア

お笑い芸人の千原ジュニアはニュースを取り扱うネット番組内で会田誠のセクハラ訴訟に対して「お笑い芸人を目指している人が高田純次さんの下ネタをセクハラで訴えるようなもの」 と発言しています。

仮にも美術大を卒業した人間が、会田誠のような著名な芸術家や現代アートに関して理解していないということに関して非常に違和感があるようです。

三浦瑠璃

国際政治学者の三浦瑠麗は「一度もググらずに聴講しに行ったのだろうか」と女性側の行動に対して疑問を呈しています。

また今回の件により「 アーティスト自身の表現領域が狭められる危険が生じてしまった 」とも述べており、表現者に不適当な規制がかかる危険性も指摘しています。

さらには「(会田誠氏の表現自体を攻撃するのは)女性の地位向上を目指すにしても間違えていると思う 」とも述べており、あくまで表現には表現で対抗するべきという意見のようです。

佐々木俊尚

ジャーナリストの佐々木俊尚はこの問題に対して「性被害としてではなく、表現の自由の観点から議論されるべき」と述べています。

そして、テレビやインターネットのような不特定多数が目にする可能性のある配信と、自ら選択して参加する大学の講義は同列に扱えないとも述べております。

村西とおる

AV監督の村西とおるは「 エロティシズムの瞬間は最も強烈で、人間精神の頂点に位置している。そのたじろぎこそ芸術」とTwitter上で自身の芸術に関する持論を展開し、そうした芸術作品に対する理解がなく訴えることに対して訴訟権の乱用ではないか?と批判しています。

北原みのり

著作家の北原みのりは女性問題や性暴力の問題について様々な運動をしていますが、今回の件に関しても「勇気ある声」と評価しています。性暴力の問題では女性側に落ち度があったとクローズアップされることも多く、今回の件もそうしたケースのひとつとして捉えているようです。


全体的に言える事として、著名人はやはりなんらかの形で表現に関係しているため、会田誠や大学側を擁護する意見のほうが多く見受けられます。

学校側の対応に問題? 芸術論や女性蔑視とは異なる論点

また今回のセクハラ訴訟では会田誠や会田誠の作品に対するものではなく、学校側の対応に不備があったのではないかという意見も多数あります。

会田誠の作品が芸術か否か?という部分や、女性蔑視的な行為に対する批判ではなく、単に精神的な苦痛を訴えただけで同窓会や仕事場(女性は美術モデルなので大学へ仕事として来る)への出入りを禁止する、というような措置は、大学側の対応に行き過ぎがあったのではないか?という論点です。

女性側はたしかに講義内容に対して「これが大学の授業なのか?」と疑問を抱き、講義で目にした会田誠の作品に酷く衝撃を受けたと語っているものの、講義内容そのものに関して訴え出ているわけではなく、むしろその後の大学側の対応に不満があったというわけです。

同窓会にも出席するなと言われましたし、モデルとしての仕事場としても入ってはいけないと。そこまでして被害者を黙らせるというか、徹底的な排除には、私はすごく憤りを覚えました。これが、一番許せない点です。法的措置を検討すると言われていたことは、訴えられないように脅しをかけていると思いました 。

引用:https://www.fnn.jp/posts/00430490HDK

つまり

  1. 会田誠の作品や講義は酷い!セクハラだ!
  2. なんであんな人の講義を大学でやっているんだ!
  3. 大学を訴えてやる!

という話ではなく、

  1. 自分の仕事(美術モデル)に関係する講義なので興味を持って行ってみた。
  2. 自分の想像とは違い、気分が悪くなるような酷いものを見せられた。
  3. しかも美術モデルを冒涜するような発言もあった。
  4. 急性ストレス障害の診断が下るほどのショックを受けた
  5. 大学内のセクハラを相談する部門に相談した
  6. 事を大きくしたくない大学側は、口封じのためにセクハラ被害は認める一方で、同窓会の出席禁止や仕事での出入り禁止措置を女性に対して通告した。
  7. 相談しに行ったら逆に仕事にも関わるような不当な措置を受けた。
  8. 大学を訴えてやる!

という流れなわけです。つまり、そもそも芸術論や女性蔑視の風潮とはあまり関係がなく、話の「解像度」を上げて改めて検証すると、いわば「大学のクレーム対応上のミス」ともいうべき問題なのです。

まとめ

30年前の会田誠青年
30年前の会田誠青年
裸の女性を大勢の男が取り囲んで凝視している。
しかも欲情することを禁じられている。
これってなんなんだ? 何ゆえなんだ?
美術・芸術の領域から一歩出た世間は
まったく違う風か吹いているじゃないか?
2018年美術モデルの女性
2018年美術モデルの女性
裸の女性と○○○○が○○○○している。
これってなんなんだ? 何ゆえなんだ?
美大の教室から一歩出た世間は、
私に対して冷たい風か吹いている。


結局、会田誠が若いときに感じた違和感と、今回大学を訴えた女性が感じた違和感は案外似たようなものだったのかもしれませんね。。。

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